突発オリジ覚書その1

アラビアンナイトな世界をイメージ。褐色美人を書きたがっただけ。

 

シム・ア・ロディアは4つの大陸の中で言えば2番目、3つある島と2つの列島を含めた9つの中で言えば4番目に豊かだ。

つまり、中堅所である。

その中で大小様々に入り乱れる無数の王国を、一つの帝国が治めている。

鴉の濡れ羽色の黒髪に、人心惑わす黄金の虹彩、恵み豊かな大地の褐色の肌をした、美しい皇族。

それが大陸シム・ア・ロディアに君臨する支配者の姿で、皇族以外にこの3つの色彩を併せ持つ者は居ない。

黒髪に褐色の肌はシム・ア・ロディアの大多数を占める民族の特色だが、大抵の者はその瞳も黒だ。ごく希に他民族と交わって黒以外を持っている者もいるが、黄金の瞳は皇族以外に現れない。

なぜなら、これは皇族がシム・ア・ロディアの支柱神、カレスティアディ・ダ・ドゥアーラと契約したことの証として、神自身の瞳と同じ色彩を授けられたからだ。

さらにいうなら、この黄金は他の地を治める皇族・王族・神官等でも持たない。

そこまでの恩恵を、他の支配者達は神より授けられなかったのだ。

シム・ア・ロディアの皇族以上に、神族に愛された者は居ない。

どの地に住まう者達よりも深く、生きる大地の神に愛されている。

神の寵愛の証したる金虹彩は、シム・ア・ロディアの皇族の絶対的な権力の象徴であり、誇りなのだ。

シム・ア・ロディアの皇族は、カレス・アディ・トゥーナと総称される。

カレスは主神カレスティアディ・ダ・ドゥアーラを省略した呼び名で在り、日常ではこちらがよく口にされる。無闇に主神の御名を持ち出すのは無礼だとされるからだ。

儀式や誓約、大切な場でのみ主神の御名全てを用いさせて頂くのだ。

アディは、「私に(私の)属する者」、「私の愛する」、といった意味合いで、血族や恋人、子供を呼ぶ際に頭に付ける。

アディ・ガジェナならば「私の一族」、アディ・マハーラならば「私の愛する娘」、アディ・リリティアーナならば「私の愛しい人」となる。

トゥーナは皇族の氏名であり、血族一党の姓である。

これを全て繋げて意味する所は、《主神の最も愛せし血族》。

その皇族を率いる皇帝の位につく次代は、この上なく高慢で麗しいと、ザルーダハもまた認めるが、好ましいと思うかと言われれば別だ。

「兄上」

己と同じ蜜色の眼を捕らえようと、リュジナーンはもう一度、甘い麻薬に耽溺するカルスティーダ(皇帝第一子)を呼ぶ。

「カリハラン兄上」

それに、とろりと溶けて流れそうな濃密な黄金がリュジナーンを映した。

「どうした、怖い顔をして。アディ・ザルーダバ(私の可愛い弟)」

密やかに笑声を漏らしてまた煙管を口に含む長兄に、柔らかに波打つ黒髪のザルーダバ(皇帝第6子)・リュジナーンは柔和に整った面貌を歪ませる。

「また円針の塔へおいでになったと伺いました」

それに、ついと眉を寄せて、興味を無くしたようにカリハランは顔を背けて嘆息した。

「嗚呼、そんなことか。可愛い弟達の顔を見に行っただけだろう。そう目くじらを立てるなよ」

「兄上。あれらに構うのはおやめ下さい」

「そう言うな。あれも弟だ」

「忌み子です。皇族にも数えられぬ、唾棄すべき者」

また始まった堅物のくだらないお小言をにうんざりして、カリハランは漂う紫煙に眼を彷徨わせる。それに、ますます顔を険しくさせるザルーダバが可笑しい。気のない素振りでつげなくされたのが不快なのだろう。別の用件で来たのなら、諸手を挙げて歓迎してやろうものを。

目の端で捕らえた弟の様子に、高らかに笑い声を上げて、カルスティーダは幾重にも積み重ねられた一抱え以上もあるクッションに自堕落に沈めていた身を起こした。

「忌み子というが、徒人と変わりあるまい」

「だからこそ、忌み子でありましょう。トゥーナでありながら、なんの力も持たぬなぞ」

皇族は、主神に愛された皇族は人外の力を持つ。それは瞳の黄金と共に神より授けられた恩恵だ。

無より有を生みだし、自然を操り、空間を越える。

人には過ぎた許されざる力だと、克己と清貧を美徳するラングナード大陸の民などはカレス・アディ・トゥーナを、崇める主神の性質と相合わせて魔人と蔑称する。

シム・ア・ロディアが国教とする、カレスティアディ・ダ・ドゥアーラを主神とし、幾万にも及ぶ多数の神々を崇めるラジンハディナ教はどちらかというと闇に傾いた教義だ。

世界はすべて神々の見る戯れの夢なれば、欲望に忠実であれ、享楽を受諾しろ、思うが儘に生きて踊り、神々を楽しませるが矮小なる人の役割であると説かれる。

カレスティアディ・ダ・ドゥアーラは愛欲と創造の絶対神であり、そう提唱する。

故にシム・ア・ロディアの人々はその教え通りに生きる。

それこそが絶大な力を持つ皇族、トゥーナを頂きながらも世界において4番目の地位に甘んじる理由だ。

国力の増大に尽力を付くすよりも、欲望に忠実に愉しみだけを求めるが故に、貧富の差が激しく地位の変動がほぼ無い。富裕層に産まれれば吐いては戻しまた食すといった程の美食に明け暮れ、貧困層に産まれれば飢餓に汚水をすすり病に伏す。ただし、実力主義が根底に掲げられているので、力を手に入れればこれを覆すことも可能だ。

シム・ア・ロディアの生きる神も人も、何よりも美と強さを愛する。

しかし、逆を言うならばそうであってすら4番目の地位を保っていることこそが、彼等の秘めたる能力を表し、それは間違いなく他国にとって脅威だ。

彼等が享楽に過ごしているからこそ、安穏に暮らしていけることを熟知している他国は、彼等が変わらずそのままであってくれることを願っている。

自由と歓楽の大陸、その中心に絢爛と咲き誇る花。

それが皇都、カレス・アディ・ロジーム。

神の愛でたる美姫。

「なぁザルーダバ?そんな詰まらないこと言ってないで、私と遊ばないか?」

「カルスティーダ」

「ザルーダバ」

なんて蠱惑的で魅惑に満ちた瞳だろうか!

この魅力に抗う事など、何者にも出来はしない。

それは血族たるリュジナーンとて変わらぬ。

「カルスティーダ、兄上」

ふらりと近寄って、獣欲に眼を爛々と輝かせ、リュジナーンは己と大して変わらぬ体格の兄の躰に乗りかかった。

そのまま艶やかな糖蜜色の膚に唇を寄せ、舌を這わす。

明確な意図を持ったその行為に、カルスティーダは仰け反って高らかに笑う。

リュジナーンとてトゥーナであることに変わりはない。

否。

何よりも上昇志向と自己顕示、権威欲が強いからこそ、巨大な力をもつ自国が他国に劣るのが許せぬのだ。

それだけのこと。

だからこそ、彼は第6子という、低くはないが、決して皇位を狙えぬ地位に在りながら宰相にまで上り詰めている。

そして、己が叶わぬと唯一認める長兄がこのように自堕落であるのが許せず、その力が、厭わしく呪わしい。

カルスティーダは弟のそうした鬱屈として憎悪が心地よく、愛おしくて堪らない。

柔らかな態度と容姿に似合わぬ、暴力的で酷薄な抱き方も気に入っている。

これは何よりも欲望に忠実だ。

「カリハラン」

そうぎらぎらと憎しみを滲ませ、普段ならば滅多に口に上らせぬ敬称を省いた呼称で。

皇太子の名を呼び捨てにして、慣らしもせず躰を推し進め挿し貫く弟にカリハランは愉悦と満足の絶叫を喉からほとばしらせた。

 

それは多分に甘い響きを孕んでいた。

 

 

 

設定メモメモ

名を呼ぶときには頭に敬称・身分を示す語句を付けるのが礼儀。親しい仲では省略される。

カレス・アディ・トゥーナは長命で、平均して5000才生きる。

血の濃い皇族は、1万以上にも生きる事がある。

 

【カルスティーダ・カリハラン】

尊称:カルスティーダ(皇帝第一子)

第1名:カリハラン(カレス神の寵児)

第2名:ロターシャ(皇王)

第3名:ロジーヌ(美しい人)

第4名:サリハーン(危険なる獣)

氏族姓:トゥーナ(花蜜)

シム・ア・ロディア大陸全土を支配する帝国シャリアン・グ・ナドの皇太子。(皇后腹の長子)

自由奔放。放埒で禁忌を持たぬカレス・アディ・トゥーナらしい皇子。快楽・享楽主義・退廃的で自堕落。しかし、活発な質で快活でもある。興味があることに対してのみ意欲的。

中肉中背の美青年。

2768才

属性:リバ(相手によって受・攻どちらにも転じる。気持ちいい事が好きなので、その場その場で自分がより気持ちよくなれる方を選択。拘りはない。基本S・Mどちらでも楽しめるので、アブノーマルも問題無し。ただし、綺麗好きなのでスカ関連は断固拒否。流血と暴力的な性行為は大好き)

 

【ザルーダバ・リュジナーン】

尊称:ザルーダバ(皇帝第6子)

第1名:リュジナーン(偉大なる蛇)

第2名:ムジャアハル(英明なる賢人)

第3名:ナジャル(正しい)

第4名:タオ(毒)

氏族姓:トゥーナ(花蜜)

カリハランの弟。(異母兄弟。第3正妃腹)

超有能で、魔力も高い。

柔和で優しい物腰の美青年で他大陸の人々の評判は頗るいい。シム・ア・ロディアの良心とか言われてるが、とっても自己顕示欲が強い権力主義。ただし、分は辨えてるので、上の人間には従順。その分鬱屈してて陰湿で陰惨で狡猾でS。かなり酷い暴力的な行為をする。

自分よりも上のカリハランを憎悪しているが、肉体関係はばっちり持ってる。

好き勝手させてくれるし躰の相性よくて気持ちいいしなにより、自尊心が満たされるので。

属性:超絶攻(受なんて絶対ゴメン。ふざけた事をおっしゃると、とても酷いことを致さなければなりませんが。お覚悟は?)

 

 

 

両者ともにメインストーリーの脇キャラ。

主役はなんの特殊能力も持たない彼らの弟。

お約束通りに自分を虐げる世界から脱出し、戦場をかけて一国を築いて生涯を終える。

長兄は手助けしたり邪魔したりと、その場その場の気分で行動。

六男はあの手この手で嫌がらせ。(というか暗殺暗殺)

弟が右往左往してるのを水鏡で眺めつつ、愛欲にふける最低兄達。

弟が死んでも、弟が築いた国が滅亡しても変わらぬ日々を生きる魔人ども。

 

 

 

 

 

 

 

突発オリジ覚書その2

砂漠のオアシス舞台(?)

 

「貴様がいたから許したのだ!でなくば誰が・・・!!」

「お許しを」

深く深く、頭を垂れる。

だがそれは、今宵の事件に関しての許しを求めているのではないことを、両者ともにわかっていた。

だからこそ、たからこそ彼は哭いた。

「許さぬ!!決して決して、私はそなたを許さぬ!!呪われるがいい!アン・ヤー・ディスファハン(砂漠の水守)!!」

哭いて、拒絶を示す。

「そなた故に、この帝国は滅びるのだ!!そなたの愚かなる選択のために!!幾万の民よりも、たった一つを惜しんだ、そなたのエゴ故に!!呪われよ!呪われよ!!絶対の加護(アン・ヤー・ディスファハン)!!名に恥じよ!!数百年にわたり継がれてきた栄誉ある称号を、そなたは地に落としたのだ!!」

薄衣ひとつ、胸の前でかき合わせたあられもない姿で絶叫した皇帝は、それでも名に恥じぬ苛烈さでもって、共に帝国の礎であった予言者を糾弾した。

「私の弟(シーハー)よ!!!」

狼藉に曝された花の風情でありながら、獣のように猛々しく、嘆きに吼えた美しいファー・ラナ・シュライレン(讃えられしは貴方のみ)を、眼下に転がる骸を踏みにじりながら、彼は見ていた。

たった一人、彼が愛することを許された、至高の存在(ファー・ラナ・シュライレン)を。

ファー・ラナ・シュライレン(我等が化身)以外を、愛することを許されてはいない、アン・ヤー・ディスファハン(我等が導き手)は。

 

それは、10年前の嵐の夜。

その日より、この帝国から、笑いは絶えた。

滅亡へ転がり始めた、月狼の帝国。

マジェ・ディアシーモ。